ヨガ

2018.05.17 20:48|精神神経免疫学

『身体はトラウマを記録する』より、ヨガによって自己感覚を取り戻すヒントを。


多くのトラウマサバイバーは

トラウマを負った時に味わった ぞっとする感覚体験の記憶や、

全くの無関係に思える些細なことがきっかけで 突然引き起こされるフラッシュバックなど

それらに触発されないよう、影響を受けないよう、身構えて

「自己を麻痺させる」ことの達人となっています。


この自分の内面世界の耐え難さを

薬物やアルコールで紛らわせようとしたり、

自傷行為、売春やギャンブルなど

危険な行動による刺激で感覚を紛らわせようとすることもあります。


長期にわたって 怒ったりおびえたりしていると 筋肉が常に緊張状態となり

痙攣や背中の痛み、偏頭痛、線維筋痛症など 慢性疼痛の症状がでることもあります。




自律神経は 人間の脳内で生存のための最も基礎的な2つの働きをしています。

交感神経は アドレナリンによって、体と脳に行動を起こすよう促します。

副交感神経は アセチルコリンによって、消化や傷の治癒、睡眠等の身体機能の調節を助けます。


息を吸うと 交感神経が刺激されて、心搏数は増加します。

息を吐くと 副交感神経が刺激されて、心搏数は遅くなります。

自律神経の調節が上手くいっていると 適切に心搏変動が起こり、平静心で健康に過ごせます。


PTSD患者などは 呼吸に連動して心搏変動が起こらず、

交感神経と副交感神経が同調していない状態にあります。

思考や感情の制御が上手くいかないだけでなく、

ストレス刺激への身体的影響で 心臓病や癌などの身体的疾患も抱えやすくなります。




「自分を本当に知る」には 身体的感覚を感じて

自分の体の要求を自覚していなければ 体の面倒をみることはできません。


トラウマサバイバーの方は

どのような状況に置かれても 自分が本当はどう感じているか、

なぜ気分が良くなったり悪くなったりしたのかがわかりません。

麻痺状態で 体の要求に応えることができず、日常の喜びの感覚も鈍ります。


自分の内部世界との関係を再度築き、

思いやりにあふれた 自己との身体的感覚を伴う関係を復活させるには

ヨガは素晴らしい方法です。


一瞬一瞬の内的身体感覚の変化を自覚する能力を養うことは

トラウマ回復にとって重要です。

体の化学的特徴、内臓、顔・喉・胴・手足の横紋筋の収縮に刻まれている情動の状態を知り

(事故や虐待の被害を受けた部位に無力感や緊張などばらばらに記憶されていることもある)

自分の感覚に耐え、内部の経験と友達になり、

「新たな行動パターンを培う能力が自分にはある」と学んでいく助けとなります。




自分が何を感じているのかに気づくだけで 情動調節がしやすくなります。

優秀なセラピストは どのようなものであれ緊張にただ意識を向けるよう励まします。

どれだけ長い間それを感じるかを呼吸の回数で決めます。


トラウマを負った方は 恐怖に満ちた状態に 永遠にはまり込んで居るように感じます。

ヨガを通じて 感覚は次第に強まり、頂点に達し、やがて弱まっていくことを学びます。

不快感がいつ終わるのか予期しやすくなり、あらゆる経験が一時的なものだと理解します。

恐れではなく、好奇心を抱いて自分の体に接し始めると すべてが変化していきます。




ヨガを20週間実習すると 自己調節に関わる脳組織、島と内側前頭前皮質が活性化します。

自分の体に安心して収まっていられるようになると

以前なら圧倒されてしまったであろう記憶を

感情に乗っ取られずに 過去におこった出来事として 消化していけるようになります。




注)骨盤が関わるポーズをすることで性的暴行のフラッシュバックが起こったり

  感覚を麻痺させ抑え込んできた過去の記憶が、強烈な身体感覚によって

  突然解き放たれてパニックをおこしてしまうケースもあります。

  ゆっくりとカタツムリのようなペースで取り組むこと、

  内部感覚に意識を向け、やがて不快感が消失してゆくのをサポートできる

  セラピストの元で学ばれることが大切です。

 

EMDR(眼球運動による脱感作と再処理法)

2018.05.05 23:09|精神神経免疫学

『身体はトラウマを記録する』より、トラウマ解放のヒントを。



EMDRとは 眼球運動による脱感作と再処理法(フランシーン・シャピロによる)のことです。


ご参考までにEMDR治療の様子を↓




トラウマを抱えた方は 過去に味わった壮絶な恐怖や憤激が

今も去らず 突然甦ったり、

抑圧して解離してしまい、不快感の実態がわからないまま

原因不明の痛みや体調不良に苦しみ続けたりします。


通常 記憶は出来上がるそばから 統合と再解釈によって進化・変化していきます。

自分で意識的に解釈を変えるのではなく、心と脳で自動的になされます。

処理が完了すると その経験は人生の他の様々な出来事と統合されて

過去の出来事として 強い情動を引き起こすような活性化した生命を失ってゆきます。


ところが PTSDなどトラウマを抱えた状態の方は

この記憶の過去化、沈静化の消化活動うまく働かず、

刺激的に活性化したまま 立ち往生してしまうのです。




EMDRは 左右への素早い眼球運動によって

抑圧して解離したトラウマ記憶や 断片的な記憶を活性化して

情動的に有意義な情報の痕跡を増やし、

意義のない情報が徐々に薄れるのを助けることによって

記憶を作り変える→統合(消化)を助けます。


この急速眼球運動は レム睡眠時にも起こっています。

脳は睡眠中に 古い記憶の断片を再生・再統合し、大きな記憶体形に統合してゆきます。

目覚めているときに 心が何に注意を払うかを決める意識下の現実を常に更新します。

レム睡眠の時間が増えるとうつが軽減し、減ると悪化します。


なお EMDR療法は

成人後にトラウマを負ってPTSDを発症した方には 顕著に回復する方が多く

頑固なトラウマ記憶に対する治療法としては有効ですが

幼少期の虐待、性的虐待、遺棄の影響に対する回復率はあまり高くないようです。




余談ですが サブブログ 魂の記憶:QHHTの記録⑤ で少し書きましたが

Quantum Healing Hypnosis Technique ( クォンタム・ヒーリング・ヒプノシス・テクニック)

ドロレス・キャノンさんが指導されていた  ヒプノセラピー(退行催眠療法)のことです。

 QHHTで 潜在意識が出てきて語りだすときも

同様に 激しい眼球振動が起こるのですよね。


また 左右への眼球運動には 外直筋と内直筋が同時に伸縮され

眼筋を束ねる 総腱輪を通って 小脳や橋に接続します。

動眼神経がどのように脳の回路や自律神経経路と関わっているのか

大変興味深いです。

自分の体の中に棲む

2018.04.15 20:50|精神神経免疫学

またもや 脳の三層構造(三位一体)でご紹介しました

『身体はトラウマを記録する』のヨガの章に引用されている

『ヨーガと真の自己の探求/スティーヴン・コープ』からの一文を転載します。


 自分の体の欲求と、体の芯から結びつき直す経験が再びできるようになってくると、

 自己を心から愛するための、まったく新しい能力が備わる。

 自らを思いやる能力に今までにない信頼を置くことができ、

 そのおかげで私たちは自分の健康や食事、エネルギー、時間管理に、注意を向け直す。

 このように前に増して自己をいたわるようになるのは、

 「するべきこと」に対する反応ではなく、自発的で自然なものだ。

 私たちは、自愛の中に直接的で本質的な喜びを経験できるのだ。




自己保存力で「脳が生存を確保するために必要なこと」について触れました。

今回は 災害や事故、レイプなど、危険や脅威を感じたとき

どのような生理作用が起こるかで ご自身の安全性のレベルがわかります。


私たちが脅威を感じたとき、まず最初に本能的に

①「社会的関与」-身の周りの人に声をかけ、助けや支援を求めます。

 救助されて安心が得られると、心拍数が落ち着き、呼吸も深く安定します。


ところが誰にも助けてもらえなかったり、さらなる危機が差し迫ってくると

②「闘争/逃走」-生存確保のため、攻撃者を撃退するか、安全な所へ逃走します。

 「腹側迷走神経複合体」活性により交感神経が主導となり、哺乳類脳(大脳辺縁系)が

 加勢して筋肉・心臓・肺が興奮状態となります。パニックや憤激、狂乱として現れることも。


それでも逃れる術がなく、襲ってくる脅威を防ぎようがないと、最後には

③「凍結・虚脱」-生体機能を停止してエネルギーの消耗を減らし、虚脱状態で凍りつきます。

 「背側迷走神経複合体」活性により副交感神経優位となり、爬虫類脳(脳幹)が虚脱反応を

 引き起こし、胃・腎臓・腸が代謝を徹底的に落とします。鼓動が遅くなり、呼吸は浅く、

 下痢や嘔吐、身体的苦痛を認識しなくなることも。


 


生存の危機にさらされるような機会など、遭遇したくはないですね。

しかしながら ご自身の日常生活を振り返ってみると

新入生の時に早く友達を作りたいと不安な気持ちになったり、

大切な肉親を亡くしたり、愛する人と別れて、暫くの放心・虚脱を経験された方も

いらっしゃると思います。


脅威が去った後に

きちんと正常な生体機能が回復できますように。

きちんと自分の体の中に棲むことができますように。

そうしたヒントを 追ってupしてゆきたいと思います。

中毒する、依存する

2018.03.25 15:06|精神神経免疫学

中毒や依存というと ギャンブル・お酒・薬物など

反社会的な ダーティなイメージが浮かぶかもしれません。

自身の健康や人生を損なったり、家族や関係者に迷惑をかけることもあり、

「理性が乏しい」「意志力が弱い」などと 後ろ指を指されることもあります。


しかしながら よく観察していくと

大概の方は 普段から理性に欠け、判断力が乏しく、獰猛で残虐な人格というわけではありません。

中毒する、一番の関心事以外では 子煩悩であったり、真面目で勤勉な方であることもあります。

また スポーツや冒険を通じて 恐怖や苦痛を味わう体験が後に至福や躍動感に変わるという
ランナーズ・ハイのような状態も起こります。




では実際に 中毒や依存という反復行為が起こっているとき

私たちの体の中では いったい何が起こっているのでしょうか。


脳の三層構造(三位一体)でご紹介しました 『身体はトラウマを記録する』に

”トラウマに中毒するー喜びの痛みと痛みの喜び”という節があります。

トラウマを負った多くの人が

大半の方が嫌悪感を覚えるような経験を追い求めたり、

怒りや強迫、極限状態でない時に 空虚感や退屈を感じ不平を言う傾向にある、と。

安全で保護される場所に愛着を持てず、なぜか虐待する家族の元へ戻ってしまったりする

自分を保護する均衡が崩れる、その身体的要因はなぜおこるのでしょうか。


1.

エンドルフィン(ストレス反応により分泌される脳内モルヒネ様化学物質)
アトラクター(私たちを惹きつけ、やる気にさせ、生き生きさせるもの)とは通常私たちの気分を良くさせるもの。ところが多くの人が危険や苦しい状況に惹きつけられる。

なぜ恐怖や苦痛といった刺激が、幸福感に変換されるような順応が起こるのか。

人はストレスにさらされると、モルヒネに似た脳内麻薬、エンドルフィンを分泌させる。

エンドルフィン分泌によりモルヒネ8mg注射に匹敵する痛覚消失結果を得たデータもある。

強いストレスや、強烈な情動は苦痛を遮断する役割を果たしているのではないか。

但し、薬物依存症と同様、エンドルフィンが分泌されるような極限状態が続かないと

離脱症状を経験し、離脱症状の苦痛でいっぱいになり、その極限状況を渇望し始める。


2.

神経伝達物質 セロトニン値の低下

扁桃体という脳の組織は、音・光景・身体感覚等を通じて様々な脅威を判断するセンサー。この扁桃体の感度はセロトニン量で決まり、セロトニン量が高いと情動が安定し、低いとストレス刺激に過敏になり、攻撃的になったり、凍りついたりする。

うつ病で処方される「選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)」プロザック等でセロトニン値の上昇が見られ服用時に一時的には安定はする。(抑えられるが治療ではない)

SSRIは、幼少期の虐待・レイプ・親との離別等で扁桃体が過敏な方には顕著に効果が見られ、戦闘帰還兵のPTSDには何の効果もなかった。

  



こうしたループから抜け出し、過覚醒や低覚醒、解離といった

自分自身の主導権を握れない状態から

身体感覚と 思考が上手くリンケージして

「自分自身を安全に生きる」ことへのヒントを

またUPさせていただこうと思います。

 

神経Wi-Fi

2018.03.15 14:02|精神神経免疫学

人体にも Wi-Fi器官が付いていて

「ミラーニューロン」として知られています。

前頭葉に存在し、共感や模倣、同調、言語の発達、集団生活への適応を助けます。



私たちは

目で見たこと

耳で聞いたこと

鼻で嗅いだこと

口で味わったこと

体で受けたこと

そうした肉体感覚の情報を いままでの経験知で統合して判断・行動しています。


知識として 5感を頼りに生活を営んでいる、と考えてしまいがちですが

「場の空気を読む」というように

他者の情動や意図など 周りに飛び交う感情や

集団の中での 自分の受け入れられ感、居心地の快・不快など

前頭葉のWi-Fiで受信した情報も入っています。




他者の怒りが飛び火して 自分まで怒りが爆発したり

ネガティブな人の話を聞いて 気分が暗くなったり

ミラーニューロンから入った情報の取捨選択能力も大切になって来ます。


また 自分が目を向けられる、配慮される

そうした共感の喜びも伝えられるのなら

自己愛 きちんとした「愛着」の部分も

共有・再活性化することができるかもしれませんね。

 

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